誠実で、優しくて、あなたのために動いてくれて、収入もある。人としては、本当にいい人。それなのに、顔がタイプではなく、触れたいとも思えない。話していてもときめかず、近づくと、なぜか気持ちが冷める。顔をとるか、お金をとるか、と自分に問いかけながら、答えが出ないまま揺れている。
相談の現場でも、いい人なのに好きになれない、というこの悩みは、とてもよく届きます。ただ、顔かお金か、という分け方は、あなたの本当の迷いを、少しずらしてしまっています。本当に問うべきことは、別のところにあります。どう考えて選べばいいのかを、実際に届いた相談をもとにほどいていきます。
それは顔かお金かではなく、惹かれる気持ちがいるかどうかの問題
まず、あなたが立てている、顔をとるかお金をとるか、という問いの形を、少し組み替えさせてください。あなたが本当に迷っているのは、顔という浅いものと、お金という現実的なもの、のどちらか、ではありません。彼に惹かれる気持ちが、自分にとって必要かどうか、です。
あなたが挙げた、お金の側、つまり彼のいいところは、収入があること以上に、誠実さ、優しさ、あなたのために動いてくれること、家族を大切にすることでした。それは、お金というより、人として、とても得がたい良さです。一方、あなたが引っかかっている顔の側は、単なる見た目の好みだけでなく、その人に惹かれ、触れたいと思える、恋愛の気持ちそのものです。この二つを、顔とお金、と並べてしまうと、あなたが惹かれたいと願うことが、まるで浅くて、わがままなことのように思えてくる。でも、そうではありません。
好きな人に、ときめきたい、触れたいと思いたい、というのは、恋愛においては、ごく自然で、大切な望みです。それは、あなたが面食いで、薄っぺらいから、ではありません。友達なら、優しくて話が合えば十分でも、恋人には、それ以上の、惹かれる気持ちを求めるのは、当たり前のことなのです。あなたが顔、と呼んでいるものは、たぶん、見た目そのものだけではなく、その人を前にしたときに、胸がときめく、という、あの感覚のことです。その感覚を、恋人に求めるのは、恋を、恋として成り立たせるための、譲れない部分でもあります。だから、まず、惹かれたい自分を、責めないでください。あなたの迷いは、浅い迷いではなく、恋愛の核心にふれた、まっとうな迷いです。
恋愛には、いい人であること以上に、惹かれる気持ちも要る
そのうえで、正直にお伝えします。恋愛の関係には、相手がいい人であること、それだけでなく、その人に惹かれる気持ちも、やはり必要です。どんなに尊敬できて、大切に思えても、そこに惹かれる気持ちがなければ、それは、恋人というより、大好きな友人に近い関係になります。
あなたは、彼を、いい人だと分かっています。優しくて、誠実で、あなたを大事にしてくれる。頭では、この人といれば幸せになれるはず、と思う。それなのに、心と体が、ついてこない。触れたいと思えない。近づくと冷める。この、頭の理解と、心のときめきのずれこそが、あなたを苦しめているものの正体です。そして、やっかいなことに、惹かれる気持ちは、こうあるべきだ、と頭で命じても、湧いてくるものではありません。優しくされたら好きにならなきゃ、と自分に言い聞かせても、体は正直で、ときめかないものは、ときめかない。
だから、もし、彼に惹かれる気持ちが、どうしても湧いてこないのだとしたら、それを、努力や我慢で、無理やり作り出そうとするのは、あまりうまくいきません。惹かれない相手と、恋愛として一緒にいることは、あなたにとっても、そして、あなたに本気で好かれたい彼にとっても、少しずつ、つらくなっていきます。そこにあるのは、優しくされているのに応えられない、という申し訳なさと、好きにならなきゃ、という焦りと、それでも動かない気持ちの、三つどもえです。この状態を、長く続けることは、あなたを、じわじわとすり減らします。
蛙化現象が示すもの。それは彼のことか、あなたのパターンか
蛙化現象。これは、あなたの気持ちを読み解く、大事な手がかりです。ただし、その蛙化が、彼に特有のものなのか、それとも、あなたに繰り返し起きるパターンなのかで、意味は、まったく変わってきます。ここを、切り分けて見てみてください。
彼にだけ強く起きるなら、惹かれていないサイン
もし、蛙化が、これまでの相手にはあまりなく、この彼に対してだけ、強く起きるのなら。近づくと冷める、触れたいと思えない、というのは、あなたが、彼には惹かれていない、という、心からの正直なサインかもしれません。この場合、その感覚は、大事にしたほうがいい。体が発している、この人とは違う、という声を、頭の理屈で、押さえつけないほうがいいのです。
誰にでも繰り返すなら、あなたの中の何かかもしれない
一方で、もし、蛙化が、この彼にかぎらず、これまで好きだった相手にも、何度も起きてきたのなら。話は、少し変わります。相手が自分に本気で好意を向けてきた瞬間や、関係が深まりかけた瞬間に、すっと気持ちが冷める、というのが繰り返されるなら、それは、相手の問題というより、あなたの中の、深く近づくことへの、ためらいや怖さが、顔を出しているのかもしれません。もしそうなら、ここで彼を手放して、もっとタイプの人と付き合っても、同じところで、また蛙化が起きる、ということも起こりえます。その場合は、相手を替えることより、自分の、近づくことへの気持ちのほうを、見つめてみる価値があります。
気になる点は、顔だけではない。彼をどう見ているか
話がつまらない、本心が見えない時がある、というのは、彼との、心のつながりや、会話の楽しさの話です。自己投資をしない、舐められやすい、おじいちゃん感がある、というのは、あなたが彼を、一人の男性として、頼もしいとか、素敵だとか、感じきれていない、ということかもしれません。
人は、心のどこかで、この人はすごい、と思える相手や、尊敬できる相手に、惹かれます。だから、彼を、頼もしい、かっこいい、と思えないことは、あなたが彼に惹かれない、大きな理由になっているのかもしれません。そして、尊敬の気持ちも、ときめきと同じで、無理に持とうとして、持てるものではないのです。
つまり、あなたが惹かれないのは、彼の顔立ちだけが理由ではなく、彼という人そのものに、心が動いていない、という、もっと根の深いところにあるのかもしれない。もし、そうだとしたら、たとえ彼の顔が、あなたのタイプだったとしても、この物足りなさは、残ったままだった可能性があります。顔をとるか、という問いで片づけるには、あなたの引っかかりは、もう少し、彼の中身にまで、及んでいるようです。
だからこそ、彼の優しさの価値も、正しく測る
ただし、ここで、逆のことも言っておかなければなりません。彼の、誠実さや優しさ、あなたを大切にしてくれることの価値を、低く見積もりすぎないでください。それは、顔やときめき以上に、ずっと得がたい、貴重なものだからです。
世の中には、顔がよくて、一緒にいてドキドキする相手はいても、あなたのために動いてくれて、家族を大切にして、誠実であり続けてくれる相手は、そう多くはありません。ときめきは、時間とともに薄れますが、優しさや誠実さは、長く一緒にいるほど、じわじわと効いてきます。だから、もしあなたが、彼を手放して、もっと惹かれる相手を、と考えるなら、その相手が、彼の持っている、この得がたい良さまで、あわせて持っているのか、を、よく見てください。
ときめきだけを追って、彼のような誠実さを失い、あとで、あの人は本当にいい人だった、と気づく人も、少なくないのです。惜しい、という気持ちが湧くなら、その惜しさは、本物です。ただ、その惜しさと、恋として惹かれるかどうかは、分けて考える必要があります。逆に言えば、彼が優しいから、という理由だけで、そばに居続けるのも、違います。優しさは、一緒にいる理由の一つにはなっても、惹かれない気持ちを、埋め合わせてはくれないからです。
選ぶ基準は、罪悪感でも不安でもなく、あなたの正直な気持ち
最後に、いちばん大事なことです。彼と、これからどうするかを決める基準は、こんないい人を好きになれない私が悪い、という罪悪感でも、この人を逃したら、もう二度と、こんな誠実な人に出会えない、という不安でも、ありません。あなたの、正直な気持ちだけが、その基準です。
罪悪感から、無理に好きになろうとして、彼のそばに居続けても、惹かれない気持ちは、消えてはくれません。そして、あなたが本気で惹かれていないことは、時間がたつほど、彼にも伝わってしまいます。あなたに本気で好かれたいと願う彼にとっても、それは、幸せなことではありません。彼は、彼を、心から素敵だと思って、触れたいと思ってくれる人と、結ばれたほうが、幸せになれる。あなたもまた、あなたが、心から惹かれる人と、一緒にいたほうが、幸せになれます。
もし、まだ迷いが残るなら、少し時間をかけて、確かめてみるのも一つです。会う中で、彼への気持ちが、ほんの少しでも育つ気配があるのか、それとも、やっぱり無理だ、が強まるのか。ただ、はっきりしない、を理由に、彼を、いつまでも待たせ続けるのは、彼に対して、誠実とは言えません。自分の中で、区切りを持って、向き合ってください。
恋愛に、これが正解、という答えはありません。惹かれる気持ちは、関係が深まるにつれて育つこともあれば、どうしても、湧いてこないこともある。ただ、はっきりしているのは、頭で選んだ我慢の恋は、長くは続きにくい、ということです。だから、彼はいい人か、ではなく、あなたが、彼に惹かれるか、彼と生きていきたいと、心から思えるか。そこを、自分に正直に、問うてみてください。
もし、その答えが、いいえ、に近いのなら、彼が、いい人だけれど、あなたの人ではなかった、というだけのことです。それに気づくのは、冷たさではありません。彼とあなたの両方を、より合う相手のもとへ、解き放つ、誠実さです。
よくある質問
顔かお金か、どちらを選ぶべきですか
万人にあてはまる正解はありません。ただ、それは顔かお金かではなく、惹かれる気持ちが自分に必要かどうかの問題です。恋人に惹かれたいと思うのは、わがままでも、浅いことでもありません。
いい人だけど好きになれない相手と、付き合うべきですか
恋愛には、いい人であること以上に、惹かれる気持ちも必要です。尊敬できても、触れたいと思えないなら、それは友情に近い関係です。無理に恋にしようとしても、たいていうまくいきません。
蛙化現象が起きるのは、相手が悪いからですか
相手のせいとは限りません。彼にだけ強く起きるなら、惹かれていないサインです。多くの相手に繰り返すなら、自分の中の、深く近づくことへの何かかもしれません。どちらかで、意味が変わります。
好きになれない理由は、顔だけですか
顔だけとは限りません。話がつまらない、本心が見えない、といった点は、つながりの問題です。顔より、その人自身に惹かれていないことのほうが、根が深い場合もあります。中身への引っかかりも、正直に見てみてください。
優しくて誠実な人を手放すのは、もったいないですか
もったいなく感じるのは、自然なことです。誠実さや優しさは、顔やときめきより、ずっと得がたいものだからです。ただ、惜しさや罪悪感だけで続けると、二人とも幸せになりにくい。惜しさと、恋として惹かれるかは、分けて考えてください。
どう決めればいいですか
罪悪感や、一人になる不安からではなく、自分の正直な気持ちで決めてください。彼はいい人でも、あなたの人とは限りません。それに気づくのは、冷たさではなく、二人を、より合う相手のもとへ解き放つ、誠実さです。

