買った服が、部屋にかかっている。新しい化粧品も、机の上に並んでいる。それを見るたび、少し前の自分が浮かれていたことがわかる。そして今、当日が近づくほど、気持ちが薄くなっていく。本当に好きなのか、わからない。前も同じことがあった。あのときは、会ったらまた好きだと思えた。今回も同じなのか、それとも、もう終わりに近づいているのか。
会う直前に気持ちが薄くなるのは、冷めたのではなく、守りに入っている
期待が高すぎるとき、人の心は、当日が近づくにつれて感情を下げにいく。
理由は単純だ。期待したまま行って、何もなかったときの落差が大きすぎる。その落差に耐えられないことを、あなたの心はもう知っている。だから、行く前に、期待の高さを自分で削る。
好きかどうかわからない、という感覚は、その削る作業の副産物だ。
準備をしすぎた人ほど、直前に落ちる
服を買った。化粧品も買った。あなたは、この日に多くを賭けた。
賭けが大きくなるほど、外れたときの痛みが増える。あなたの心は、その計算を勝手にしている。そして、痛みを減らすために、賭け金のほうを下げようとする。別にそんなに好きじゃないかも。この一言が出てくる。
冷めたのではない。怖いのだ。
前回も、同じことが起きている
前も同じ現象が起きて、会ったらやっぱり好きだと感じた。
同じ人が、同じ場面で、同じ反応を二度している。これは偶然ではなく、あなたの心の癖だ。
大きな期待を前にすると、あなたは感情を平らにする。会って、実際に相手を見ると、その平らにしたものが元に戻る。前回、そうだった。
見分けるのは、当日にしかできない
今の時点で、冷めたかどうかを判定しようとしても、材料がない。会っていないからだ。
会って、目を見て、声を聞いて、その瞬間に何を感じるか。それだけが材料になる。今、部屋で考えても、答えは出ない。
ただし、脈ナシ過ぎて、と書いたところは軽く見ない
脈ナシ過ぎて辛くなって気持ちが覚めているのか。
あなたは、脈がないことを、すでに知っている。知ったうえで、それでも会う準備をして、服を買っていた。
報われないと知りながら、続けている
その状態が、どれくらい続いているだろうか。
片思いが長引くと、人は消耗する。楽しみと苦しさが同じ量になり、やがて苦しさが上回る。上回った瞬間に、心が撤退の準備を始める。
今、あなたに起きている感情の平板化は、期待からの防衛かもしれないし、消耗による撤退のはじまりかもしれない。この二つは、外から見ると同じ形をしている。
前回と今回で、違うところがある
前回は、脈ナシ過ぎて、という言葉が出てこなかった。今回は出ている。
同じ現象に見えても、あなたの中の材料は増えている。数ヶ月分の、脈がないという情報が積み上がった。その情報の重みが、今回の平板化に混ざっている可能性がある。
だから、前回と同じだから大丈夫、とも言い切れない。
あなたはもう、答えの一部を知っている
わからないと書きながら、脈ナシ過ぎて、とも書いている。この二つは、同時には成り立ちにくい。
わからないのは、彼の気持ちではない。わからないのは、それを知ったうえで自分がどうしたいか、のほうだ。
当日、確かめるのは彼の気持ちではなく、あなたの体
会って、何を見ればいいのか。ここを決めておくと、当日が少し楽になる。
会った瞬間の三秒
彼が現れて、あなたを見つけて、こちらに歩いてくる。その三秒で、あなたの体が何をするか。
胸が動くのか、動かないのか。ここが、いちばん正直な材料になる。頭で考える前に、体が答えを出す。
前回、あなたはその三秒で、やっぱり好きだと感じた。同じことが起きるかどうかを見る。
帰り道に、何を感じるか
会っている最中は、楽しいに決まっている。数ヶ月ぶりで、準備もして、会えたのだから。
見るべきは、帰り道だ。別れたあと、電車に乗って、一人になったときに、何が残るか。
満たされているか。それとも、疲れているか。もっと会いたいと思うか。それとも、次はいつなんだろう、という不安だけが残るか。
疲れと不安のほうが大きかったら、それは、冷めたのではなく、この片思いがあなたを削っている、ということだ。
期待を、当日の朝に下げない
不安から、期待を下げようとする気持ちが出てくると思う。どうせ何もない。期待しないでおこう。
その予防線は、あなたを守らない。むしろ、当日のあなたを固くする。固い人は、うまく笑えない。
期待していい。何もなかったら、そのとき悲しめばいい。悲しむのを先払いしても、割引にはならない。
何かを進めたいなら、その日に一歩だけ
もし、今回で何かを動かしたいなら、会う前に一つだけ決めておく。
次に会う約束をする。連絡の頻度を増やす提案をする。あるいは、気持ちを伝える。
どれでもいい。ただ、その日に何もしなければ、この数ヶ月は繰り返される。また数ヶ月後に、同じ服を買い、同じ状態でこの記事を読むことになる。
買った服と化粧品を、無駄にしない
あれだけ準備したのに、気持ちが薄れてしまった。その自分に、少し失望していると思う。
失望しなくていい。あの買い物は、無駄になっていない。
準備は、彼のためだけではなかった
あなたは、数ヶ月ぶりに会う日を、特別な日にしたかった。だから、服を選び、化粧品を選んだ。
その時間、あなたは楽しかったはずだ。楽しかった時間は、彼の返答とは関係なく、あなたのものとして残る。
彼が何も返してくれなくても、あの数週間の高揚は、あなたが自分で作ったものだ。
ただし、これを何度も繰り返さない
一度なら、いい思い出になる。二度、三度と繰り返すと、これは消耗になる。
数ヶ月かけて期待を膨らませ、会って、何も進まず、また数ヶ月待つ。この周期を何度も回すと、あなたの中の何かが確実にすり減る。
だから、当日に一歩だけ動く。動いて、返ってきたものを見て、そこで決める。
決めるのは、彼ではなく、あなた
彼の気持ちを待ち続けるかぎり、決定権はあなたの手にない。
会って、何かを伝えて、返事を受け取る。そこで初めて、続けるか離れるかを、あなたが決められるようになる。
わからないまま数ヶ月を過ごすことのほうが、はっきり断られることより、長く苦しい。
この片思いが、あなたの生活をどれだけ占めているか
最後に、少し違う角度から見る。
数ヶ月に一度しか会えない相手のために、服を買い、化粧品を買い、当日が近づくと感情が乱れる。この数ヶ月、あなたの頭のどれくらいが、彼で埋まっていただろうか。
好きかどうかより、消耗しているかどうか
冷めたのか、まだ好きなのか。その問いに、はっきり答える必要は、実はない。
見るべきは、この恋があなたに何を与え、何を奪っているかだ。
会う日が楽しみで、日常が明るくなるなら、それは与えている。会えない期間が苦しく、返信を待つ時間で一日が終わり、脈ナシ過ぎて辛い、と感じるなら、それは奪っている。
奪う量が増えたときに、心は先に撤退する
あなたに起きている感情の平板化は、もしかすると、あなたの心が先に判断を下したのかもしれない。
頭がまだ好きだと言っているのに、心が、これ以上は危ない、と信号を出している。そういうことが起きる。
冷めたのではなく、守られている。そう考えると、今の状態は、あなたの心が正常に働いている証拠になる。
FAQ
会う直前に好きかわからなくなるのは、冷めたからですか
期待が高いときに、心が落差を予測して感情を下げにいくことがある。前回も同じ現象が起き、会ったら好きだと感じたなら、それはあなたの心の癖だ。冷めたのではなく、守りに入っている可能性が高い。
前回と同じだから、今回も大丈夫ですか
言い切れない。前回と違って、今回は、脈ナシ過ぎて、という言葉が出ている。数ヶ月分の情報が積み上がった。その重みが、今回の感情の平板化に混ざっている可能性がある。
当日、何を見れば判断できますか
彼が現れた瞬間の三秒で、体がどう動くか。そして、帰り道に何が残るか。満たされているのか、疲れと不安だけが残るのか。会っている最中ではなく、帰りに出る。
期待しないほうがいいですか
予防線は、あなたを守らない。当日のあなたを固くするだけだ。悲しみを先払いしても、割引にはならない。期待していい。
買った服や化粧品が無駄になった気がします
無駄ではない。準備していた数週間、あなたは楽しかったはずだ。その時間は、彼の返答とは関係なく、あなたのものとして残る。ただし、同じ周期を何度も繰り返すと、消耗に変わる。
この片思いを続けるかどうか、どう決めればいいですか
彼の気持ちを待っているかぎり、決定権はあなたにない。会って、一歩だけ動く。返ってきたものを見て、そこで決める。わからないまま待つほうが、断られるより長く苦しい。

