随分ひどい扱いだな、と言われた。この仕打ちは相当だな、とも。相手は上司で、同じ職場で、明日も顔を合わせる。あなたは今、自分がひどいことをしたのだと思い込んで、どう謝れば許してもらえるかを考えている。順を追って説明するつもりだった、と何度言っても、責める言葉が返ってくる。
愚痴を聞いていた。飲みに行った。関係が始まった。相手の要望がエスカレートした。拒否すると、独り相撲だと言われ、あなたが謝るまで終わらなくなった。別れようと距離を置いた。妊娠がわかった。別の相手と結婚することになった。相手はそれを知って、威圧的に責めた。
あなたの非は、たしかにある。ただし、一点だけ
きちんと別れを切り出す前に、次の関係に進み、妊娠した。この順番について、あなたが引っかかっているのはわかる。ここは、あなたの側の話として、確かに残る。
ただ、それは、謝れば済む範囲のことだ。そして、あなたはすでに、終わらせようとしていた。距離を置いていた。時期を見て切り出すつもりだった。何もしていなかったわけではない。
相手の側にあるものを、あなたが引き受けている
一方で、相手の側に起きていたことを見る。
要望をエスカレートさせたのは、相手だ。妻がやらなかったことをあなたに求めたのは、相手だ。あなたが拒否したときに、独り相撲だと言って罪悪感を植えつけたのは、相手だ。謝らないと話を終わらせなかったのは、相手だ。
これらは、あなたの落ち度ではない。相手が、関係の中で繰り返してきた振る舞いだ。
独り相撲だな、という言葉の正体
拒否するたびに言われた、この一言を見てほしい。
あなたが何かを断ると、相手は、自分だけが空回りしている、と表現した。すると、あなたは、断った自分が悪い気になって、謝った。
これは、相手が使っていた仕組みだ。あなたに罪悪感を持たせて、あなたの拒否を撤回させる。この仕組みが、関係の中で何度も繰り返されていた。
そして今、別れの場面でも、同じ仕組みが使われている。ひどい扱いだ。この仕打ちは相当だ。あなたに罪悪感を持たせて、あなたを動けなくする。
随分ひどい扱いだな、という責めを、どう見るか
だから最近そっけなかったんだな。随分ひどい扱いだな。俺がよかれと思ってやっていたのは無駄だったんだな。自分が恥ずかしいわ。この仕打ちは相当だな。
これらは、傷ついた人の言葉のように聞こえる。ただ、その機能を見ると、少し違うものが見えてくる。
責めの言葉が、あなたを謝罪に追い込む
これらの言葉は、あなたに、申し訳ない、と思わせる。思わせて、あなたを、許しを乞う立場に置く。
許しを乞う立場に立った人は、相手の要求を断れなくなる。もう一度会ってほしい。関係を続けてほしい。あるいは、黙っていてほしい。何を求められても、断りにくくなる。
これは、別れの場面で、相手が主導権を握るための構造だ。
この仕打ちは相当だな、という一言の含み
かなり怒り口調で、この仕打ちは相当だな、と言われた。あなたはそう書いた。
この言葉には、含みがある。相当なことをされたのだから、相当な仕返しをしてもおかしくない、という含みだ。
これが、脅しとして機能する。あなたは、相手を怒らせたら何をされるかわからない、と感じる。感じるから、慎重になる。慎重になって、相手の機嫌を取ろうとする。
相手が実際に何かをすると言ったわけではない。ただ、この言い方が、あなたを萎縮させる。
上司であることが、この構造を強くしている
相手は、ただの元交際相手ではない。同じ職場の上司だ。
この力関係が、すべてを重くしている。あなたは、仕事の場で、相手より下の立場にいる。相手が職場でどう振る舞うか、あなたには止められない。
関係が始まった発端も、この力関係と無関係ではない。上司が、部下の愚痴を聞き、飲みに誘い、関係を持った。ここには、対等ではない構造が最初からあった。
あなたが感じている、どうしたらいいかわからない、という感覚は、あなたが弱いからではない。相手が、力関係を背景に、あなたを追い込んでいるからだ。
あなたが今すぐ守るべきものは、相手の機嫌ではない
謝って許してもらうこと。あなたは今、それを目標にしている。目標を、変えてほしい。
守るべきものは、三つある。あなたの心の安全。妊娠中の体。そして、これから始まる家庭だ。相手の機嫌は、その中に入っていない。
記録を、今日から取る
相手とのやりとりを、記録する。日付、時間、場所、言われた言葉、状況。
職場で言われたこと、メールやメッセージで来たもの。全部残す。メッセージは消さない。スクリーンショットを取る。
これは、相手を陥れるためではない。あなたが、身を守るために必要になったときの備えだ。もし相手が職場で不利な扱いをしてきたり、しつこく接触してきたりした場合、この記録が、あなたを守る材料になる。
相手と、二人で会わない
これから、相手と二人だけで会う場面を作らない。話をつけるために、と呼び出されても、応じない。
二人だけの場では、あなたはまた、謝罪に追い込まれる。これまでそうだったように。人のいる場所か、記録の残る手段でだけ、必要なやりとりをする。
やりとりを、最小限にする
別れの理由を、丁寧に説明したくなるかもしれない。順を追って、わかってもらおうとするかもしれない。
それは、もうしなくていい。あなたは十分に説明した。説明しても、責める言葉が返ってきた。相手は、あなたの説明を受け取る気がない。受け取る気のない相手に、繰り返し説明することは、あなたを消耗させるだけだ。
関係は終わりました。それ以上の説明は、いらない。
これから始まる家庭を、この関係から切り離す
あなたは、別の相手と結婚し、その人の子を妊娠している。新しい家庭が、これから始まる。
この家庭を、不倫相手との関係から、はっきり切り離す。
過去は、新しい家庭に持ち込まない
不倫相手への罪悪感を、抱えたまま結婚生活に入ると、その罪悪感が、あなたを苦しめ続ける。
済んだことは、済んだこととして置く。あなたは、終わらせようとしていた。そして、終わらせる。それでいい。過去の関係を、これから始まる生活の中で、何度も再生しない。
結婚相手に、どこまで話すか
これは、あなたが決めることだ。正解はない。
ただ、一つだけ。もし相手が、職場であなたに接触し続けたり、あなたの結婚相手に何かを伝えようとしたりする可能性があるなら、あなたの口から先に、結婚相手にある程度伝えておくことも、選択肢になる。
不意に、第三者から伝わるより、あなたから伝わるほうが、あなたを守ることがある。ただし、これは義務ではない。あなたの状況と、結婚相手との関係を見て、決めていい。判断に迷うなら、後で挙げる相談先で、整理を手伝ってもらえる。
妊娠中の体を、最優先にする
今、妊娠している。ストレスは、体に影響する。
相手に責められ、どうしたらいいかわからなくなっている今の状態は、あなたの体にとって、良くない。
相手の機嫌を取ることより、あなたが穏やかに過ごせることのほうが、今は優先される。それは、あなたのためであり、お腹の子のためでもある。
FAQ
きちんと別れを告げなかった私が、全面的に悪いのでしょうか
別れを告げる前に次に進んだ点は、あなたの側の課題として残る。ただ、それは謝れば済む範囲のことで、あなたはすでに終わらせようとしていた。一方、要望をエスカレートさせ、拒否を謝罪で撤回させ、力関係で責め立てているのは相手だ。相手の振る舞いまで、あなたが背負う必要はない。
相手が上司なので、断れません。どうすればいいですか
上司による圧力は、職場のハラスメントとして相談できる。会社のハラスメント窓口や人事部、都道府県労働局の総合労働相談コーナーがある。一人で、上司と一対一で対処しようとしない。それは相手が最も望む構図だ。
順を追って説明したいのですが、聞いてもらえません
もう十分に説明した。説明しても責める言葉が返ってきた。相手は受け取る気がない。受け取る気のない相手への繰り返しの説明は、あなたを消耗させるだけだ。関係は終わった、という事実以上の説明は、いらない。
結婚相手に、不倫のことを話すべきですか
義務ではない。あなたが決めることだ。ただ、相手が職場で接触し続けたり、結婚相手に何か伝えようとする可能性があるなら、あなたの口から先に伝えておくことが、あなたを守る場合がある。判断に迷うなら、相談窓口で整理を手伝ってもらえる。
相手とのやりとりは、記録したほうがいいですか
したほうがいい。日付、言われた言葉、状況を残す。メッセージは消さず、スクリーンショットを取る。相手を陥れるためではなく、職場で不利な扱いを受けたり、しつこく接触されたりしたときに、あなたを守る材料になる。
妊娠中で、ストレスが体に響きそうで不安です
強いストレスは体に影響する。妊婦健診で、助産師や医師に、つらい状況を抱えていることを伝えておく。相手の機嫌を取ることより、あなたが穏やかに過ごせることのほうが、今は優先される。

