年上の配偶者と結婚した人が、年下や同世代とこっそり不倫している。そんな話を周りで何度も耳にすると、これは特別なことなのか、それともよくあることなのか、そして、そういう人たちをどう受け止めればいいのか、と気になってきます。相談の現場でも、身近な不倫話は驚くほどよく持ち込まれます。不倫そのものは決して珍しくない一方で、年の差婚だから不倫が多い、という見方には、数字の裏づけがあるわけではありません。なぜそう見えてしまうのか、その背景に何があるのか、そして、こうした人たちをどう考えればいいのかを、実際の相談や調査をもとにたどっていきます。
不倫そのものは珍しくないが、年の差婚が特に多いという証拠はない
まず数字の話をすると、既婚者の不倫は、決して珍しいものではありません。ただし、年上の配偶者を持つ人が特に不倫しやすい、という裏づけがあるわけではない。この二つは、分けて考える必要があります。
不倫がどれくらいの割合で起きているかは、調査によって大きく幅があります。近年の全国的な調査でも、既婚者のうち不倫や浮気を経験した人は、おおよそ一割から三割程度と、調べ方や不倫の定義によってばらつきます。おおむね、男性のほうが女性より高く、若い世代ほど高い、という傾向は、複数の調査で共通しています。ただ、これらは本人の自己申告に頼るため、正確な数字は誰にも出せません。それでも、一定の割合の既婚者が経験している、という点だけは、どの調査でも変わりません。
数字がこれほど割れるのは、何を不倫と数えるかが調査ごとに違うからでもあります。体の関係だけを指すのか、気持ちの上でのつながりまで含めるのかで、割合は大きく動く。だから、一つの数字を鵜呑みにするより、幅があること自体を前提に眺めるのが、落ち着いた向き合い方です。付け加えると、仮に経験者が二割や三割いるとしても、裏を返せば、大多数の既婚者は不倫をしていない、ということでもあります。珍しくないという事実と、みんながしているという印象は、まったく別ものです。
一方で、あなたが気にしている、年上と結婚した人が年下と不倫する、という組み合わせが特に多いかどうかは、こうした調査では測られていません。世の中の不倫統計は、配偶者との年齢差で分けて集計されているわけではないのです。だから、年の差婚に不倫が多い、という印象は、データに支えられたものではなく、あなたの周りでたまたま重なって聞こえてきた話から生まれた、いわば体感です。不倫はありふれているが、年の差婚がその温床だという証拠はない。ここがまず出発点になります。
身近に多いと感じるのは、目立つ話ほど記憶に残るから
年の差婚の不倫が身近にあふれているように感じるのは、そういう話が実際に多いからというより、目立つ話ほど強く記憶に残るからです。人の印象は、数の多さではなく、話の鮮烈さに引っぱられます。
考えてみてください。円満で、お互いに誠実な夫婦の日常は、わざわざ人に語られることがありません。うまくいっている、というのは、話のネタにならないからです。一方で、年上の夫がいるのに若い相手と、といった不倫は、意外性も背徳感もあって、聞いた人の記憶に深く刻まれます。
そして、そういう話ほど、人から人へと伝わりやすい。結果として、あなたの頭の中には、誠実な夫婦の膨大な例は残らず、劇的な不倫のいくつかだけが、鮮やかに積み上がっていきます。実際の割合より、ずっと多く感じられるのは、このためです。
これは、あなたの感覚がおかしいわけではありません。人の頭は、印象の強い出来事を、自動的に頻度が高いものと錯覚するようにできています。だから、いくつかの話が続けて耳に入ると、世の中そんな人ばかりのように思えてくる。けれど、あなたが聞いていないところで、多くの夫婦が、語られることのない誠実な毎日を送っています。耳に入る話の数を、そのまま世の中の割合として受け取らないほうが、実像に近づけます。
もう一つ働いているのが、いちど年の差婚は危ういと思い込むと、それに合う話ばかりが目に留まる、という偏りです。誠実に添い遂げている年の差夫婦は視界から抜け落ち、当てはまる例だけが記憶に残っていく。思い込みは、それを裏づける材料を、自分で勝手に集めてしまうのです。
出会いの手段が増えたことは、実際に不倫を後押ししている
身近に不倫話が増えたと感じる背景には、印象の錯覚だけでなく、出会う手段が実際に増えた、という現実の変化もあります。スマホひとつで、家庭の外の相手とつながれる時代になったからです。
かつては、家庭の外で新しい相手と出会うには、それなりの場と手間が要りました。いまは、ネット上の交流の場やメッセージのやりとりで、誰とでも気軽につながれる。なかには、既婚者どうしをつなぐことをうたうサービスまであります。こうした手段が広がったことで、これまでなら踏み出さなかった人が、軽い気持ちで一歩を越えてしまう場面は、確かに増えています。あなたが耳にする話に、アプリで知り合った、という筋が混じるのも、この変化を映しています。
ただ、手段が増えたことと、その一歩を選ぶかどうかは、別の問題です。つながりやすくなった環境は、あくまできっかけを増やしただけで、踏み出すか踏みとどまるかは、その人次第です。道具のせいにも、時代のせいにもできない。むしろ、誘惑の入り口が近くなったからこそ、家庭の中でどう向き合うかが、前より問われる時代になった、とも言えます。手段が近くにあるぶん、踏みとどまる意思のほうも、前より意味を持ちます。
年の差や不満のある結婚で、外に向かう気持ちが生まれる背景
不倫が実際に起きるとき、その背景にあるのは、その人がもともと不誠実だから、というより、結婚生活の中で埋まらなかった隙間であることがほとんどです。年の差や、すれ違いのある結婚は、その隙間が生まれやすい条件を、いくつか抱えています。
すれ違いや孤独が、きっかけになりやすい
年齢が大きく離れていると、時間が経つにつれ、体力や生活のリズム、これからやりたいこと、求める関わり方に、ずれが出てきやすくなります。結婚した当初は気にならなかった差が、十年、十五年と暮らすうちに、少しずつ広がっていく。また、そもそも安心や生活の安定を求めて結婚した場合、恋愛としての満たされなさが、あとから顔を出すこともあります。家庭の中で、話を聞いてもらえない、ひとりの異性として見られていない、と感じる時間が続くと、その渇きが外へ向かう。
不倫は、多くの場合、悪意からではなく、こうした満たされなさの穴埋めとして始まります。相手が年下や同世代に向かうのも、多くは、若さそのものより、そこで自分がふたたび求められ、生き生きと扱われる感覚を取り戻したいからです。
分かることと、許されることは別
ただし、背景が分かることと、その行いが許されることは、まったく別の話です。事情を理解しようとするのは、相手を免罪するためではありません。どんなに満たされない結婚でも、配偶者を欺いて別の相手と関係を持てば、いちばん近くにいる人を深く傷つけます。もし結婚生活が本当に立ちゆかないなら、向き合って直すか、関係を終わらせるか、という正直な道がある。背景に同情の余地があることと、嘘という手段を選んだことは、切り離して見る必要があります。傷つくのはいつも、何も知らされないまま信じ続けた側です。そこを忘れなければ、事情への理解が、裏切りの肯定にすり替わることはありません。
こうした人たちをどう考えるか、ひとつの正解はない
不倫する人をどう思うかに、これが唯一正しい、という答えはありません。受け止め方は人によって幅があり、そこを一つに決めつけるより、複数の見方を知っておくほうが、現実に即しています。
はっきりしているのは、約束を破り、配偶者を欺く行いが、身近な人を傷つけるという点です。そこを軽く見るべきではありません。だから、不倫を許せないと感じる人が多いのは、自然なことです。一方で、破綻した結婚の中で長く孤独を抱えてきた人の事情まで含めて見ると、単純には責めきれない、と考える人もいます。どちらの見方にも、それなりの理があります。大事なのは、行いそのものをどう評価するかと、その人の人となりを丸ごと断じることを、混同しないことです。
年上と結婚した人、三十代の女性、といったくくりを、そのまま不倫しやすい人種のように語るのは、公平ではありません。不倫は、年の差にも性別にも関係なく、あらゆる形の結婚で起きています。目の前の一人を、属性で決めつけずに見ることが、いちばん実像に近い態度です。そして、いくつかの不倫話を聞いたからといって、人間なんてそんなものだ、と世の中全体を斜めに見てしまうのは、もったいないことです。裏切る人がいるのと同じだけ、長い年月を誠実に連れ添う人たちがいます。目立つ影のほうばかり見て、静かな光を見落とさないでください。
もしこの話が、あなた自身の何かに触れているなら
もし、こうした不倫話が気になって仕方ないとしたら、それはただの好奇心かもしれませんし、あなた自身の何かに触れているのかもしれません。そのどちらであっても、責めるような話ではありません。
人の不倫にやけに心が引っかかるとき、その裏に、自分の結婚への漠然とした不安が隠れていることがあります。もし、あなたが自分の関係に満たされなさを感じているなら、相手を疑ったり、外に答えを探したりする前に、自分たちの間で何が満ち、何が足りていないのかを、一度見つめてみてください。
逆に、パートナーの様子に不安があるなら、一人で想像をふくらませるより、信頼できる人に話したり、専門の相談につないだりするほうが、気持ちは落ち着きます。もし、あなた自身の心が家庭の外に動きかけているのなら、その気持ちを責める必要はありませんが、行動に移す前に、いま満たされていないものが本当は何なのかを、正直に見てみてください。
外の誰かは、その穴を一時的にふさぐだけで、根っこは家庭の中にあることが少なくありません。他人の不倫は、遠くの出来事のようでいて、ときどき、自分の足元を照らす鏡になります。その光を、誰かを裁く方向にではなく、自分の関係を確かめる方向に使えたら、この気がかりも、少しは意味のあるものに変わります。
よくある質問
年上と結婚した人が年下と不倫するのは珍しいですか
珍しくはありませんが、年の差婚だから特に多い、という裏づけはありません。不倫そのものが一定の割合で起きていて、年齢差はその一つの要因にすぎません。年上と結婚したこと自体が、不倫の原因になるわけではありません。
既婚者の不倫の割合はどれくらいですか
調査によって幅が大きく、おおよそ一割から三割程度とされます。男性が女性より高く、若い世代ほど高い傾向が、複数の調査で見られます。ただし本人の自己申告に頼るため、正確な数字は出しにくいのが実情です。
なぜ身近に不倫話が多いと感じるのですか
目立つ話ほど、記憶に強く残るからです。円満な夫婦はわざわざ語られず、劇的な不倫だけが耳に刻まれます。いくつか続けて聞くと、実際の割合より、ずっと多いように感じられます。
年の差婚は不倫されやすいのですか
年齢差が大きいほど、価値観や生活段階のずれは生じやすくなります。ただ、不倫は年の差に関係なく、あらゆる結婚で起きています。年の差婚そのものを不倫と結びつけて考えるのは、公平ではありません。
不倫する人を、どう思えばいいですか
見方は人それぞれで、一つの正解はありません。相手を裏切り欺くことが人を傷つけるのは確かですが、人となりを属性で一括りに断じるより、その人の事情も含めて見るほうが、実像に近づきます。
こういう話を聞くと、自分の結婚が不安になります
不安なら、相手を疑う前に、自分たちの関係で何が満たされ、何が足りていないかを見てみてください。想像だけをふくらませると、不安は大きくなります。必要なら、信頼できる人や専門家に話すことも助けになります。

